マグナ・グラエキアの神殿群
パエストゥム

イタリア南部、カンパニア州の緑豊かな平野に静かにたたずむ古代都市パエストゥムは、かつて「ポセイドニア」と呼ばれたギリシャ人による植民都市でした。紀元前6世紀、この地にやってきたギリシャ人たちは、地中海交易の拠点として都市を築き、神殿や公共建築を整備します。
パエストゥムは、いわゆる「マグナ・グラエキア」― 古代ギリシャ人が南イタリアやシチリア島に築いた諸都市のひとつであり、古代ギリシャ文明がイタリア半島に色濃く影響を与えた証です。やがてローマに征服されたのちも、都市は再整備されながらもそのギリシャ的特徴を色濃く残しました。
パエストゥムの最大の見どころは、何といっても紀元前6〜5世紀に建てられた3つのドーリア式神殿。他の多くの遺跡と違い、ここではローマ化が進んだ後もギリシャ的世界観を伝える建造物が見事に残されており、本家のギリシャでも類を見ないほど、当時の姿が良好な状態で残されています。
ヘラ神殿(通称「バジリカ」)

紀元前550年頃に建立された、パエストゥムで最も古い神殿。列柱は太くどっしりとしたプロポーションで、全体的に重厚な印象を与えます。通称「バジリカ(バジリカ様式の建物)」とも呼ばれてきましたが、実際には女性の守護神ヘラに捧げられた聖域です。
その荘厳な構造は、ヘラ信仰の強さと、当時の植民都市マグナ・グラエキアにおける神殿建築の始まりを象徴しています。
ネプチューン神殿

パエストゥムで最も保存状態が良好な神殿で、紀元前460年頃の建築と考えられています。列柱のバランスと迫力あるエンタブラチュア(上部構造)が見事に調和し、古代ギリシャ建築の力強さと美の粋を体現しています。ポセイドンあるいはゼウスに捧げられた可能性もあるこの神殿は、紀元前5世紀の建築技術の成熟を感じさせる完成度の高さで、訪れる者を圧倒します。
アテナ神殿(またはケレス神殿)

3つの神殿の中では比較的小ぶりながら、他の神殿とは異なる位置(やや高台)に建てられており、神聖な雰囲気が漂います。紀元前500年頃に建てられたとされ、ドーリア式とイオニア式の建築要素が共存している点が大きな特徴です。
この複合的な様式は、建築技術の過渡期や文化的交流の影響を映し出すもので、都市の発展とともに変化する宗教建築の姿を読み取ることができます。
飛び込み男の謎

パエストゥムのもう一つの見どころが、「飛び込みの男」。紀元前5世紀の若者の墓に描かれたこの絵は、一本の塔から海へと飛び込む人物の姿を描いており、ギリシャ美術の中でもきわめて珍しい「動的な瞬間」を描いた作品です。なぜ墓に飛び込みの場面が描かれたのか? 飛び込む先は海なのか、象徴的な死後の世界なのか? その意味はいまだ明確には解明されていません。
これらの彩色陶器、建築装飾などの出土品は、遺跡に隣接する考古学博物館で展示されています。神殿を見学した後に立ち寄れば、パエストゥムという都市が持っていた宗教性、文化、そして人々の生と死にまつわる想像力が、より立体的に浮かび上がってきます。
アクセス
パエストゥムは、ナポリから南へ約100km、サレルノのさらに南に位置しています。ナポリからの所要時間は約1時間半〜2時間ほど。ナポリ中央駅からローカル線(サレルノ経由)でPaestum駅へ。駅から遺跡までは徒歩約15分と、アクセスは比較的スムーズです。
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