フィレンツェの中心地からわずか6kmしか離れていないところにオリーブ園に囲まれ動物たちとふれあえる農園があります。
その農園は前回触れたレオナルド・ダ・ヴィンチが飛行実験を行ったマイアーノ山の麓にある「マイアーノ農園」です。
今回は、様々な魅力にあふれたこの「マイアーノ農園」をご紹介したいと思います。
イタリア最大の植物園
まずこの農園の一番の魅力は、ロバ、馬、牛、アヒルなどの多くの種類の動物を敷地内に飼い、一部の動物たちは放し飼いになっていてエサをあげたり、撫でたりと直接ふれあうことができる様になっている事です。
さらに50万平方メートルの広大な敷地内には多彩な薬草、野生の植物に品種などが書かれたプレートがつけられイタリア最大の植物園にもなっています。
内容豊富な体験ツアー
そんな「マイアーノ農園」は、毎週末フィレンツェ市民の家族連れで賑わい、農園スタッフと共に農業体験が出来たり、動物達の飼育の話を聞いたり、製造しているワインやオリーブオイルの試飲ができたりと多くのツアーが設けられ、ツアーに参加した後は約二万本を数えるオリーブの木の下に座って、ピクニックを楽しむことも出来るようになっています。
入場料は7ユーロ
マイアーノ農園は7ユーロのチケットを購入して中に入ると好きなだけ農園内で過ごせる様になっています(2021年6月現在)。
チケット売り場のそばには小さなポニーが数頭繋がれ、リクエストによって子供たちを乗せて園内を散歩することもできる様になっています。(こちらは別料金)
ルネサンス期のエピソードも満載
マイアーノ農園からフィレンツェの景色が見えるように、この農園はフィレンツェ中心地からとても近く、この周辺にはルネサンス期の巨匠たちに因んだ場所が数多くあります。
レオナルドが通ったマイアーノ山の麓にあり、ミケランジェロが育ったセッティニャーノの街がそばにあり、さらにメディチ家のお気に入りの鉱山であり、この山から採掘した石を使って多くのフィレンツェの建築物が作られました。
正に農園にいながらルネサンスの歴史も身近に感じることができる様になっています。
トスカーナ特有の動物たち
農園に飼育されている動物達の中には、トスカーナ特有の動物も見ることが出来ます。
シエナ近郊の古代豚のチンタ・セネーゼ(サラミ肉としても有名)
アミアータのロバ(トスカーナ州グロッセート県のアミアータ山に住み着いたと言われるアフリカに起源を持つ古代ロバ)
農園の人気者「ジンジャー」と「フレッド」
農園の動物たちの中で一際注目を集めているのは、数年前につがいで購入された二頭のダチョウ「ジンジャー」と「フレッド」です。
流石にダチョウはちょっと危険なので直接エサを与えたりすることはできないのですが、人が近づくと餌をもらえると思ってゆるりゆるりと柵の方に近づいて来ます。
120キロを超える迫力のある大きな体には不釣り合いな拳くらいの小さな頭、そこにはジーとこちらを見つめる大きな目がついています。
フィレンツェでアフリカの動物ダチョウを見るというのもなんとも不思議な感じですね。
英国人富豪の大改革
さて、ここで少しこの農園の歴史について触れてみましょう。
もともとこの農園があった辺りは、フィレンツェの独自の石「ピエトラ・セレーナ」の採掘場として非常に栄えた場所でした。
しかしその採掘場も1800年代初めには閉鎖され、山は石がむき出しになった状態で放置されていたそうです。
そこにイギリス人の富豪ジョン・テンプル・リーダー卿がその採掘場があった土地をそのまま買い取り、そして大々的な植樹工事を行います。
1881年に始まった糸杉や松を植える工事によって、わずか10年ほどで山は再び緑に覆われ、イギリス式の庭園がマイアーノに生まれます。
まるで絵画!?「ラゲット・デッレ・コロンネ(柱の小さな湖)」
イギリス式の庭園とは、フィレンツェに生まれた遠近法を使った幾何学模様や円形など緑の形を人工的に作り直す建築的なルネサンス(西洋)庭園に反対したもので、森や湖など自然のあるがままの形を庭園に取り入れるスタイルが18世紀イギリスに生まれました。
その「ロマンティック・ガーデン」とも呼ばれたイギリス式庭園は その名前の通り幻想的で甘美な夢を見ているような要素が満載で、森の中にお茶を楽しむティーハウスがあったり、小道を抜けると突然涼しげな湖が現れたり、トスカーナのアーティスト達が作ったアート作品が森の中に展示されていたりして沢山のサプライズ要素に溢れています。
この涼しげな湖は「ラゲット・デッレ・コロンネ(柱の小さな湖)」と呼ばれ、かつてここにあった採掘場からメディチ家がサン・ロレンツォ教会の中の柱に使う石を採掘したと言われています。
湖のそばの中世スタイルの塔など、その風景はまるで19世紀のイギリス人画家たち(ロセッッティやジャン・エヴァレット・ミレーなど)が描いた絵の様な空間になっています。
数少ない一年中営業しているアグリツーリズム
マイアーノ農園は13の部屋と6つのアパートの宿泊施設も併合したアグリツーリズムでもあり、農園で採れた無農薬野菜、ワイン、オリーブオイルを堪能できるレストランもついています。
トスカーナには沢山のアグリツーリズモ(農園兼宿泊施設)がありますが、多くの施設は冬から春にかけて宿泊客が少ないシーズンは営業していません。
しかしこのマイアーノ農園はフィレンツェの街からも近く、利用する人たちが一年を通して多いことからシーズンに関係なく営業しているのも魅力の一つと言えると思います。
もし小さなお子様を連れて一風変わったフィレンツェ滞在を考えていらっしゃるのであれば、「マイアーノ農園」はいかがでしょうか?