覚悟を決めたイタリア
新型コロナウイルス感染状況が少しずつ落ち着いていき、4月26日に大部分の地域で飲食店や映画館などの営業が再開しました。20ある州のうち14州に関して「イエローゾーン」に指定され、ロンバルディア州もイエローになりました。レストランやバールでは屋外のみ営業を再開できるほか、劇場、映画館、博物館などが入場人数を制限した上で営業を再開でき、学校の対面授業も拡大されます。
さらにドラギ首相は5月4日、新型コロナウイルスワクチン接種を証明する「グリーンパス(ワクチンパスポート)」を5月中旬から独自に発行すると表明し、外国人観光客に夏にイタリアに旅行するよう呼び掛けました。
EUでは、観光客が再び自由に旅行できるよう明確でシンプルなルール作りが重要と述べ、ワクチン接種の終了後6ヶ月以内、コロナ陽性から陰性になり抗体が出来てから6ヶ月以内、検査で陰性が証明されて7日間以内などを証明するグリーンパスを6月中旬から導入を検討しています。
しかしドラギ首相は5月半ばに独自のグリーンパスを発行する方針を示し、観光業が国内総生産の13%を生むイタリアでは、ワクチンパスポートを早期に導入し夏に観光客を誘致したいと考えています。イタリアは今年、G20の議長国を務め、5月4日に行われたG20観光相会合において「旅行や観光の再開は世界経済の回復に不可欠」とする声明を発表しました。
加速するワクチン接種
観光再開を目指しているには根拠があり、現在のワクチン接種状況が予想を上回るスピードで進んでいるからこその大きな方向転換とも言えます。
最初のプランでは、私の年齢で今年の10月から12月に接種可能と言われていました。しかし最近になって、5月中には予約が始まるであろうと言われています。ロンバルディア州では医療関係者ではなく、一般予約の場合、1回目の接種はファイザー社かモデルナ社のワクチンになるそうです。
左側からスタートのグラフでは今の段階で接種目標(青色)の25%が一回目の接種を終了(黄色)しており、また高齢者の7~8割が少なくとも1回は接種を終えていることにより、方向転換に踏み切ったとも言えます。
計算上、今の接種スピードのままでいくと10月には、当初の目標であった人口の8割が2回のワクチンを終了することになります。
3度目のロックダウンを乗り切った自分へのご褒美は?
2度目が終わった時は日本食屋で寿司を致死量まで食べました。
今回は今、巷で話題のローマ発祥スイーツ「マリトッツォ」に挑戦です!
2021年、日本でネクストブレイクのスイーツと言われているマリトッツォは、イタリアンスイーツとしてはティラミス以来と言われています。ブリオッシュ生地にたっぷりの生クリームを挟み、現地ローマでは朝食として、バールなどでカプチーノと一緒に食べるのが一般的だそうです。何より、サンドされている溢れんばかりのクリームはインパクトがあり、写真映えすることからここ最近になって突然、話題になってきました。クリームを挟んでいるのはしっとりとしたパン生地で、甘すぎないのもうれしいポイントです。朝食としてはもちろん、おやつにもぴったりのスイーツでした。
マリトッツォの名前の由来は「マリート(旦那さん)」という単語と言われ、諸説ありますが、古代ローマ時代に羊飼いの旦那に持たせた腹持ちの良いパンが起源という説があります。記録として残されている最古のものは19世紀前半になりますが、ローマの詩人が「私は毎日、聖なるマリトッツォを買いに行く…」と残しています。また、詩人のジギ・ザナッツォは、3月の第1金曜日に未来の妻となる女性に、指輪を入れたマリトッツオをサプライズで贈ると残しています。
そこでインターネット記事をもとに、ミラノで食べられる「おすすめ3大マリトッツォ」を試し、独断で順位をつけてみました。
第3位
ポルタロマーナ地区の住宅地にある「Marlà」(マルラー)
住所Corso Lodi 15
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ドゥオーモ広場から地下鉄3号線に乗り3つ目の駅、ポルタロマーナ駅から徒歩で5分ほど、大通りに面しているのでわかりやすい場所にあります。
着席で食べても値段は変わらないのですが、サーブはないので自分で運ぶ形になります。試してみたのはチョコレートベースのマリトッツォ(3.5ユーロ、テーブルチャージなし)。甘さ控えめのクリームの下に、同じく甘さを控えたチョコレートクリーム。表面はカカオパウダーがびっしり!これは…「口もと汚れる系スイーツ」であり、焼きそばの青のりと同じくらいの危険性があります。まずは紙ナプキンで洋服をカバーし、いかに品よく食べるかを試行錯誤してみたのですが、やはり至るところにカカオパウダーを撒き散らしていました。しかし、これらの苦労を乗り越えても食べてみたい逸品でもあります。
第2位
お持ち帰りの箱も可愛い「Gelsomina」(ジェルソミーナ)
住所Via Carlo Tenca 5
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地下鉄駅では3号線レプブリカ駅から5分と比較的近く、1号線ポルタヴェネツィア駅からも歩いて10分ほどで、行けないこともありません。住宅地の中にあり間口が狭く奥に長いので見落としがちだと思われますが、店のイメージカラーは赤と白の縞模様。楳図かずおを思わせる配色がインパクトのある門構えです。
現在、5月いっぱいは店内での飲食が禁止されているため、店頭にテーブルを置いていますが、ここではお持ち帰りにしました。ラズベリーのマリトッツォ(4.5ユーロ)。横長の形状はボールペンの長さより少し小さめです。それでもインパクトのあるクリームの量。中には酸味の効いたラズベリーソースとキャラメルソースのバランスが絶妙。
第1位
値段も味も一流「Galleria Iginio Massari」(ガッレリア・イジニオ・マッサーリ)
住所Via Marconi 4
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ドゥオーモ広場から歩いて1分。普段だったら観光中に10分の写真タイムがあったら、ダッシュで買いに行くお客様もいるんだろうな…、と昔に想いを馳せて入店。選んだのはピスタチオのマリトッツォ(6ユーロ、テーブルチャージ込み)。知る人ぞ知る巨匠、ブレーシャ出身のイジニオ・マッサーリ(78歳)の高級店であります。現在北イタリアのみで店舗展開、ブレーシャ、ミラノ、トリノ、ヴェローナにあります。マッサーリ様の長いキャリアでは300ものコンクールで受賞、彼の「食べ物は美味しいだけではなく、美しく、エレガントで魅力的でなければいけない」という有難い御言葉通り、見た目にも美しいこのマリトッツォは、甘さ控えめのクリームにビターチョコがアクセントに貼り付けられ、クリームの下にはピスタチオソース、アクセントにヨーグルトソースで全体のバランスを取ってました。
エレガントとは程遠く手掴みで食べてしまいましたが、ふと周りを見ると、ナイフとフォークで食べているではありませんか!どうやらここではこれが御作法のようでした。
現在、観光のお客様がいないミラノでは地元のミラネーゼのみが着席している状態で、場所柄か品の良いご婦人も多くこの店に訪れています。いくら軽めのクリームとはいえ、あの年齢でマリトッツォを丸々一個平らげている様子に、イタリア人の驚異的な胃袋を再確認させられました。
結論「マリトッツォは絶対、誰かとシェアして食べた方がいいです」
(川倉靖史、ミラノ)