2020/05/18

外出禁止令解除。フィレンツェ市民の心を癒やすアイリスの庭園

外出禁止令解除後のフィレンツェ

5月18日からイタリアでは経済活動制限の一部が緩和されレストラン、バールなどが営業を再開し始めました。
その様子を見るのも兼ねて久々にフィレンツェの中心街とフィレンツェを見渡せるミケランジェロ広場まで散歩に出かけてきました。

イタリアでは2月半ばに最初のイタリア人のコロナ感染者が発表されてから、あっという間にイタリア全土のロックダウン宣言、そして全国民が家の中に閉じこもる自粛生活を余儀なくされました。
この外出禁止の二ヶ月間は毎日増えていく感染者、死者数に怯え、イタリア式の生活習慣(キス、ハグなどのスキンシップ、近所に住む家族との食事や友人達とのアペリティフなど)を全て禁止されるというイタリア人にとっては大きなストレスと不安を抱える日々が続きました。

現在でも感染者/死者数などが多い為、安心はできない状態ですが、5月4日からの外出禁止令の解除、それに続くブティック、美容院、レストラン、バールなどの営業再開のニュースはやっと普通の生活に戻るための段階的なサインの一つとして大きく報道されました。

ここ数日お天気が崩れ気味だったので、なんとか持ちそうだった今日(5月18日)を選んで出かける事にしました。
久々に歩いたフィレンツェの中心街は外国人観光客の姿は全く見られず、外出を待ちわびていたフィレンツェ市民がチラホラ街中を散歩していました。
三ヶ月前までは想像もできなかった、マスク嫌いのイタリア人が全員マスクをして歩いている様子(フィレンツェでは外出時のマスクが義務化され、いち早くマスクが市から各市民に二枚ずつ配布されました)を見るのは正直今でも異様な感じがします。。。
久々に仕事ではなく、一人で歩いたフィレンツェでしたが、やっぱり「ルネッサンスの街」は相変わらずため息が出るほど美しく、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂、シニョーリア広場、ヴェッキオ橋なども日の光を浴びて輝いて見える様でした。。。

新しい生活様式

今日から営業を再開し始めたレストランやバールは入店時の手の消毒やマスクの着用、テーブル間の間隔を2m空けるという規定を守りながら店内で食事をサービスしていました。
ただ小さな店舗が多いフィレンツェでは、開店しても少人数しか客を入れられないので採算が合わないと言った理由から、まだ閉店したままのお店が沢山あるのも事実です。

このコロナの影響を受けて経営危機に直面しているのは店舗だけではなく、伝統工芸に関わる職人達も同じで、「ダンテの家博物館」の近くに工房を構える革小物の職人TADDEI(タッデイ)さんもその一人です。
彼はNHKや旅行雑誌などに度々取り上げられ、3代に渡って革製品を作り続けている有名な職人さんですが、突如観光客がいなくなってしまい、注文もほとんど入らなくなってしまったことから、「この状態がいつまで続くのか。。。」と暗い顔をしていました。
典型的な職人気質でアナログ人間の彼は、この外出禁止期間の間に色々考えたようで「そろそろインターネットとやらを学ばないといけないのかなあ。。」とこぼしていました。
歴史、伝統を重じる街でデジタル化を考えるというのも時代の流れなのかもしれません。。。

さて、気になるウフィッツィ美術館やアカデミア美術館ですが、いつから開館するのかまだ検討中という事でフィレンツェの美術館/博物館関係は全て閉まったままの状態です。

自然の芸術品アイリス庭園

こんな感じでまだちょっと寂しいフィレンツェではありますが、「自然の芸術品」ともいえる見事な一級アイリスの数々を期間限定5月だけ開園して見学できる「アイリス庭園」を見てきました。
アイリス庭園はフィレンツェの街を見下ろせるミケランジェロ広場のそばにあり、世界中の愛好家が出展する「アイリス国際コンクール」のアヤメたちが植えられています。

 

アイリスはフィレンツェの街にとっては重要な花で、街の紋章の元になった花と言われています。
ちょっと話がずれるかもしれませんが、このフィレンツェの紋章の花が人によって「Giglio(百合)」だ。いや、「Iris(アイリス)」だ。と違っていたりします。(フィレンツェ人もはっきり分かっていない人たちが多いようです)
ちょっと気になって調べて見たのですが、フィレンツェの紋章とこの二つの花の混乱の理由は諸説あるようで、二つの花の名前が似てるから混同されていったとか(イタリア語だと百合が「ジーリオ」フィレンツェのアヤメが「ジャッジョーロ」、ラテン語読みだと百合が「リリウム」とアヤメが「イリス」)、元々は聖母マリアの純潔のシンボルである百合がフィレンツェ のシンボルだったが、後にフィレンツェ の町の周りにはスィートアイリスがよく咲くので最終的にアイリスの形が紋章になったなどの説があるようです。
ともかくこのアヤメの庭園では、1954年から「国際アイリスコンクール」が毎年開催される様になり、世界の愛好家、専門家が独自に交配させた色鮮やかで豪華なアイリスの数々を楽しむ事ができます。
1967年に作られた小さな池には「日本のアイリス」と呼ばれる「野花菖蒲(Iris ensata )」が植えられています。
庭園を歩いていると芥子色やサーモンピンク、紫に明るい黄色の組み合わせや赤紫、朱色??といった絶妙な色合いのアイリスが並び、思わず足を止めて魅入ってしまうものばかりです。
しかし、沢山の華やかなアイリスを堪能した後で思ったのは、やっぱり私のお気に入りのアイリスはフィレンツェの野に咲く淡い紫の「Giggiolo(ジャッジョーロ)」だなと。。。
自然が生み出す鮮やかな色彩の数々に心を少し癒された午後でした。。。

最後の写真は今年は見に行けなかった「英国人墓地」一面に咲くジャッジョーロです(去年撮影したもの)