街の中心に建つ、その名もジュゼッペ・ヴェルディ劇場。
劇場の前に広がるジュゼッペ・ヴェルディ広場で、ヴェルディの銅像がお出迎えしてくれます。

小ぢんまりとしていますが、本格的な馬蹄形の劇場です(かつてはもっと大きかったのですが、防災上の問題を考慮して縮小されました)。
ブッセート近郊の村レ・ロンコーレで生まれたヴェルディは、幼い頃から音楽の才能を発揮しました。
彼を見込んだブッセートの富裕な商人、アントニオ・バレッツィの庇護を得て、ブッセートで本格的に音楽の勉強を始めました。

ジュゼッペ・ヴェルディ劇場の向かい側に今も残るバレッツィさんのお屋敷。
内部はヴェルディにちなんだ博物館になっています。
~Tutta Italiaスタッフの訪問当時は、館内撮影禁止だったため、案内して下さった管理人さんのお話をご紹介します♪~

バレッツィ氏は酒類を扱う商人で、レ・ロンコーレにあったヴェルディの父親が経営するオステリアにお酒を卸していました。
幼いヴェルディに音楽の才能を見出すと、ブッセートの自宅に彼を住まわせ、大聖堂の音楽家のもとへ勉強に通わせました。
なんとヴェルディの一人目の奥さんはバレッツィ氏の娘だったそうです。
天井が高く、青い壁紙の美しいサロンには、オペラ『二人のフォスカリ』の作曲に使われたグランドピアノが置かれています。
その後ヴェルディはミラノへ移り住みましたが、バレッツィ氏の亡くなる数日前に呼び戻されます。
サロンの隣室で臨終の床についていた彼のために、有名な合唱曲「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」を演奏したそうです。
館内はヴェルディの結婚当日に描かれた肖像画、楽譜や直筆の手紙、オペラのポスター等々、ヴェルディ・ファンにはたまらない貴重な品々が多数展示されています。
さらに、ジュゼッペ・ヴェルディ劇場で1913年に『椿姫』、1926年に『ファルスタッフ』を指揮した名匠アルトゥーロ・トスカニーニの指揮棒が展示されています。
彼はブッセートからほど近いパルマの出身です。

<ジュゼッペ・ヴェルディ劇場に残る、トスカニーニの出演を記念するプレート>
それから時は流れ、スカラ座で活躍した指揮者、リッカルド・ムーティが博物館を訪問しました。
彼を案内した管理人さんが、「ご来訪の記念に、貴方様の指揮棒を寄贈していただけないでしょうか」とお願いしたそうです。
マエストロ・ムーティ、初めは難色を示していたそうですが、博物館の展示を見学した後に深く感銘を受け、快く指揮棒をプレゼントしてくれたそうです。
その際、トスカニーニに敬意を表し「彼の指揮棒から離して置いてください」とリクエストしたとのこと。お人柄がしのばれるエピソードです。


街を散策すると、通りに作曲家の名前が付いていて楽しいです♪
また、この辺りは上質の生ハム「クラテッロ」の産地として知られています。
創業140年のクラシカルな居酒屋「バラッタ」さんで、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
Salsamenteria Storica Baratta
地図
https://goo.gl/maps/6TujQn6KfwvF9AJk6
■ブッセートへのアクセス

ブッセートには鉄道駅があります。
ミラノ-ボローニャ間の主要幹線をフィデンツァ(FIDENZA)という駅で乗り換えてアクセスできます。ローカル線、または駅前からバスが運行しています。
余談ですが、フィデンツァには知る人ぞ知るロマネスク様式の大聖堂があります。

美しいパルマの洗礼堂を設計した建築家、アンテラーミが正面入り口の装飾を手がけており、緻密な装飾は見ごたえがあります。



フィデンツァで乗り換えの待ち時間が30分以上ある人は、足を延ばしてみる価値があります。
なお、大聖堂は日曜日はお休みです。またフィデンツァ発ブッセート方面行きの列車・バスも日曜日は本数が減るので、平日の訪問がおすすめです。