秘密のヴィラ・クイエテ
ヴィラ・ペトライアとヴィラ・カステッロのほど近くに、知られざるもう一つのヴィラがあります。
女子修道院として利用され、メディチ家の末裔、アンナ・マリア・ルイーザも晩年を修道女たちとともに暮らしたヴィラ・クイエテです。
アンナ・マリア・ルイーザは、自らの代で途絶えるメディチ家の全財産を遺言でトスカーナ州に譲渡、かつ州外へ持ち出せないようにしました。
そのお陰で膨大な美術コレクションは散逸を免れ、今もフィレンツェで見ることができます。
四方の壁と天井をフレスコ画で埋め尽くしたメディチの間です。
十字架を頭につけた鹿の不思議な意匠は、アンナ・マリアの夫グリエルモが信仰していた狩猟の守護聖人、聖ヒベルトのシンボルです。
よく見ると、壁に隠し扉があるのがお分かりになりますでしょうか(画像左側)?中に入るとらせん階段で上層階と行き来できるようになっているそうです。
また、こちらの建物では1650年から1900年代までモンタルヴェ女学校が開校していました。
富裕な家庭の子女が学び、特に、女性に向けた化学、天文学、数学教育のパイオニア的な場所でした。
修道女たちは、あのサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局を運営していたフィレンツェの修道士たちから薬草の調合を学んでいました。
作業に使われたお部屋が今も残っています。
薬草を入れた壺はフィレンツェの老舗陶磁器メーカー、リチャード・ジノリ製です。
教会には、女学校を開いた女性教育者、エレオノーラ・ラミレス・デ・モンタルヴォのお墓が残っています。
清貧な修道院にふさわしく、大理石ではなく漆喰でつくられています。
代々受け継がれた銀の祭壇は、修道女が私物の宝石をはめて、装飾を加えていきました。
フィレンツェにナポレオン軍が侵攻してきた時は、略奪を避けるため畑に埋めて隠したそうです。
女学生が他の信者から姿を隠して礼拝に参加できるよう、2階に格子窓が取り付けられています。
そして、ヴィラ・クイエテを訪れたらぜひご覧いただきたい貴重なお宝が、ボッティチェッリ作「聖母戴冠」です。
長らくその存在を忘れられ、1922年まで非公開となっていました。
ミュージアムスペースでご覧いただくことができます(撮影禁止)。
ヴィラ・クイエテは一般非公開となっており、予約制のガイドツアーで見学可能です。
予約代行、フィレンツェからの専用車、日本語通訳の手配を承ります。お気軽にお問合せください。