「シチリアのご当地パスタといえば?」と聞かれると、まず外せないのが「パスタ・コン・レ・サルデ(イワシのパスタ)」でしょう。
このパスタは、アラブ統治時代に誕生したと言われています。シチリアは、ギリシャやアラブをはじめ歴史的に様々な文化から影響を受けましたが、それらをうまく融合させ、独自の文化へと発展させました。「パスタ・コン・レ・サルデ」はそんなシチリアを象徴する料理と言えるでしょう。
さて、サルデ(Sarde)はイワシという意味ですが、使用するのはイワシだけではありません。その他にレーズン、松の実、フェンネル(和名:ウイキョウ)の葉などが入ります。イワシだけではシチリアのパスタ・コン・レ・サルデにはなりません。
レーズンといえば、日本ではお菓子に使うのが一般的なイメージですが、シチリア料理には欠かせない食材の一つです。塩気のある料理にレーズンの甘みがアクセントになります。
また、忘れてはならないのがパン粉です。最後にカリカリに炒ったパン粉をたっぷりかけて頂くのもシチリアスタイル。もともとは貧しい農民がチーズの代わりに炒ったパン粉をかけていたため「貧乏人のチーズ」とも言われるそうですが、このカリカリの香ばしいパン粉がとてもいい仕事をします。
日本人にとってはあまり馴染みのない組み合わせに見えますが、百聞は一“食”に如かず。シチリアにきたら一度このイワシと他の食材たちのハーモニーを味わってみてください。病みつきになる味です。
「一度」と言いましたが、このパスタは使っている食材は同じでもお店によってレシピやスタイルが異なるので、同じイワシのパスタでありながら何度でも楽しめるのも魅力です。旅行中は、違うお店で何回か試してみるのも面白いですよ。
この「パスタ・コン・レ・サルデ」はシチリアの州都パレルモの伝統パスタなのですが、今回ご紹介したいレストランは、シチリア屈指のリゾート地タオルミーナの近郊にある『リストランテ・ダ・ニーノ』です。
世界的アーティストやスポーツ選手などのセレブが訪れるだけでなく、なんと2017年にタオルミーナで開催されたG7サミットの際に日本の安倍首相が食事をするなど、国の要人を迎えるのにも利用されるほどの名店です。
お店のこだわりの一つが魚の鮮度。店内にはその日仕入れた食材がずらりと並べられます。海沿いにあるレストランなので、夏はテラス席でも食事ができます。イオニア海を見ながら、ワインを片手にシチリアの魚介料理に舌鼓…なんて最高ですね。
そんなリストランテ・ダ・ニーノのパスタ・コン・レ・サルデがこちらです。シチリアらしい可愛いデザインの大きな皿に2人分はあろうかと思うほどの量のパスタ(これは1人分です)。もちろんたっぷりの炒ったパン粉がかかっています。上には更にイワシをプラスし、フェンネル(ウイキョウ)の葉がどんと乗せられています。
熱々アルデンテのパスタ、イワシのうまみ、レーズンの甘さ、松の実の食感、フェンネルの香り、それらをまとったパン粉…。全てが口の中でうまくまとまり、絶妙なお味。どんどん箸…ではなくフォークが進んでしまいます。
こちらのレストランでは、魚介を使った前菜の品揃えも豊富ですので、色々試してみてください。さまざまな海の幸を使ったマリネやオーブン焼き、フリット、アグロドルチェ(甘酢仕立て)…どれを食べても絶品です。また、別館にワイナリーがありソムリエも常駐しているので、是非おすすめのシチリアワインも聞いてみてくださいね。
【店舗情報】
Ristorante Da Nino(リストランテ・ダ・ニーノ)
住所: Via Luigi Rizzo, 29, 98037 Letojanni ME
TEL:+39 0942 36147
(記事:サエコ)