再びの外出禁止令
12月に入ると同時にボルドーは雨が多くなり、気温も下がってすっかり冬の気候。日の出も8時半くらいと遅いフランスの12月です。
10月末から全国的な2回目の外出禁止となっていますが、1回目と異なるのは、今回は可能な限りで在宅勤務をしながら仕事は継続、お役所や郵便局も開いていて、幼稚園小中学校では通常通り授業、それ以上の教育機関は部分的または全面的に遠隔授業となっています。
11月28日の週末からは第一段階の緩和となりました。一日の新たなコロナ感染者数が5000人以下、蘇生病床数が2500から3000人などの条件を満たした場合には、12月15日から更に緩和となる予定です。減少の仕方が遅いので条件を満たすか心配され始めました。
許可されれている理由を記した証明書を携帯すれば外出可能で、現在運動や買い物は3時間自宅から20kmの範囲で可能です。順調にいくと12月15日から証明書は必要なくなります。フランスのクリスマスは日本のお正月のようで、普段は遠くに住む家族も集う大切な時季。それを可能にするため、マクロン大統領は衛生対策の継続を強く呼びかけていました。今ワクチン接種方法が検討されていてお年寄りや医療従事者などから優先的に行われるとのことです。12月15日以降は21時から朝6時までの夜間外出禁止となりますが、12月24日と31日は例外になっています。大パーティーをやる人がいませんように。
劇場、美術館、映画館も12月15日から再開予定です。ボルドーオペラ座の今年末の演目は、7月から延期されていたバレエ「ラ・シルフィード」。優雅でロマンチックな踊りに誘われて、夢の世界へ旅したいですね。21時以降の夜間外出禁止に合わせて時間を繰り上げての上演予定です。年末の楽しみの一つ、観劇や音楽鑑賞ができるようになるのは嬉しいことです。
5つ星ホテルのフードトラック
レストランに関しては状況をみた上で1月20日から再開ということで、飲食業はまた大変な痛手を受けています。持ち帰りは可能なので、普段より値段を下げたテイクアウトメニューで営業を続けているところも多く、レストラン業の方たちの努力を感じずにはいられません。ちょっとびっくりしたのは5つ星インターコンチネンタル・グランドホテルが、フードトラックを始めたこと。ここ数年、大学付近や会社、工場が集まる辺りでは、お昼少し前にやってきて駐車、周りにパラソルや椅子を並べてハンバーガーや手軽な持ち帰りメニューを売るフードトラックが増えています。買っている人はやはり若者、そして男性が多いように思います。フランスの食文化も変わりつつあるいい例でしょうか。さすがにグランドホテルのフードトラックで売られているものは、ホテルのミシュラン二つ星レストランPressoir d’Argentプレッソワール・ダルジャンのメニューではなく!、クロックムッシュやバーガー、スープ、甘いクレープやココア、ホットワインなどです。メニューを見たらおいしそうだったので、試しに山羊のチーズとアボガドトマトにバジリコソースのホットサンドを買ってみたところ・・・7ユーロのクロックムッシュ、もちろんお味はいいですが、やっぱり軽食でもレストランで座っていいただける日が待ち遠しいです。
ボルドーのクリスマス
食料品以外のお店も11月28日土曜日から営業可能になりました。クリスマスには家族や親戚のそれぞれにプレゼントを贈るフランスでは、12月の売り上げが多くのお店にとって大変重要なのです。今年は6人以上の会食をしないようにと政府からの指示ですが(子供を除く)、クリスマスや大みそかのディナーにはみんなお洒落をします。美容院や最近増えてきたバーバーショップも開いています。
下の写真は以前にもご紹介したショッピングセンター、マルシェ・デ・グランゾームMarche des Grands Hommesです。営業再開に際しお客さん一人あたり8㎡の確保が必要となり、400㎡以上の店舗ではお客さんの数を入店時に数えるようになっています。写真は平日の午前中だったため人もまばらですが、この近辺は高級ブティックも並んでいて夕方や週末にはプレゼントを買う人で賑わいます。
このショッピングセンターを中心とした「トリアングル・ドール黄金の三角形」と呼ばれる地区は18世紀にノートルダム教会と修道院を中心に造られた古い地区で、トゥルニ―広場、オペラ座のあるコメディ広場、ガンベッタ広場を結ぶときれいな三角の形をしています。地図でも一目でお分かりになるはずです。三角地域内にはフレンチLe Chapon Finル・シャポン・ファンはじめレストランや、バスクのホットチョコレートがお勧めのMiremontミールモンのティーサロンもあります。
グランゾーム近くにもコロナ検査場があり、PCR検査が処方箋無し予約無し無料で(国民健康保険が全負担)で受けられるようになっています。トラムに乗ると、消毒ジェルが設置されています。切符の刻印機と間違えそうですが、白い方が消毒ジェル、切符を近づけてピッと反応させる器械は黄色です。刻印は自主的で違反者も多いため時々係員の人が乗り込んできて乗車券チェックをするのですが、その検札かと思いきや、係員の人の手には消毒スプレーと布巾。ドアの取っ手や手すりをこまめに拭いてくれています。
北部のガロンヌ川沿い下流方面には、ボルドーヴィラージュBord’eau Villageと呼ばれる、倉庫跡を改装したショッピング街があります。ボルドーは、英国領時代、三角貿易時代、18世紀の最盛期とガロンヌ川水運のお陰で栄えてきた港町です。1925年に造られ90年代には黒ずんだ汚い建物となって放置されていた倉庫がきれいに生まれ変わって、今では日曜もショッピングができる人気の場所になっています。外観は四角い倉庫型を残しつつも、中は衣料品や家庭用品店、チョコレート屋、レストランなど。川沿いの道も幅があり、ジョギングや犬と散歩する人も見られます。左の写真に写っているシャバン・デルマス橋に向かって歩いて行くと、その袂にはワイン博物館Cite du vinシテ・デュ・ヴァンがあります。
クリスマスのご馳走 フォアグラ&キャビア!
プレゼント調達に目途がついてくると、お次は皆クリスマスのメニューを考え始めます。街の南の方にあるMarche des Capucinsカプサン市場に行ってみました。今のように大規模な卸市場や郊外の巨大スーパーマーケットができる前から200年以上ボルドー人の胃袋となっています。普段は市場の中で買い物がてら食事やおつまみと一杯が可能なのですが、今は飲食店が閉まっているので何となく静かな雰囲気です。それでもチーズ屋さんはお客さんが並んでいて、色とりどりの野菜や果物、チョコレートのスタンドが出ていたり花屋さんにはモミノキが売られているのを見るとクリスマス気分になります。年末の食材の注文受け付けます、の看板もあちこちに出ていました。
フランスのクリスマスのご馳走というとフォアグラです。フランス南西部は鴨の産地。普段から鴨のステーキやスモークした鴨肉はよく食卓に上ります。スライスしたフォアグラには薄いトーストしたパンのほか、玉ねぎを甘く煮たものやイチジク、スグリのジャムやバルサミコソースなどを添えることが多いです。そしてボルドーではもちろん、フォアグラはソーテルヌの貴腐ワインといただきます。貴腐菌によって熟したぶどうの実から水分が蒸発していくと糖度はさらに上がっていきます。それを収穫し搾って得られた甘いぶどう果汁をアルコール発酵させ、糖分の残るワインに仕上げられた極甘口白。少量の果汁しか得られないため、また収穫の手間もかかるので貴重な高級ワインなのです。ドライフルーツやはちみつなどの香りに加えて樽熟成された貴腐ワインは奥深い甘美な香り、輝く黄金色琥珀色になっていきます。真ん中の写真は水分が少なくなり干しブドウのようになっているぶどう、一番右はソーテルヌの王様シャトーディケムを見学した時の写真です。朝は霧が濃く午後晴れるこの地域の気候は貴腐菌に好条件。見渡す限りのぶどう畑を左右に、秋晴れのソーテルヌドライブは最高です。
もう一品、南西部はキャビアの産地 でもあります。一時は乱獲によって数が減ってしまったチョウザメ、ボルドーから東へ内陸部方面のドルドーニュ地方や、西側大西洋近くにはチョウザメの養殖場がありキャビアを生産しています。以下の写真は2年前にスチュリア社(STURIA)を見学したときのものです。屋外の数ある水槽の中には、成長段階ごとに分けられたチョウザメがゆらゆらと泳いでいました。取り出した卵を丁寧にほぐして洗い、塩を混ぜて缶詰されていきます。熟成の度合いや粒の固さも様々な種類があり、「バターのような」「ナッツの香り・・」などと表現されるのはワインのよう。シャンパンはもちろんのこと、ボルドーの辛口白ワインといかがでしょうか。今年はレストランからの注文が激減しているためフランス産のキャビア消費をしよう、という声が上がっています。
ところでサンタクロース、フランス語でパパ・ノエルはボルドー近くに住んでいることをご存じですか。本拠地?は北極だと思うので、フランス事務所かもしれないですね。フランスの子供たちはサンタさんに手紙を書く時、宛名には「 Pere Noel, 33500 Libourne」と書きます。ボルドーから40km、サンテミリオンに近いリブルヌです。12月半ばまでに手紙を送るとちゃんとお返事が届きます。
パパ・ノエルから全世界に、平和な2021年が届きますように。
皆さま素敵なクリスマスとよいお年をお迎えください。
追記
「その後12月10日の政府の発表で、劇場や映画館の再開は12月15日からさらに3週間の閉鎖延長、12月15日以降の夜間外出禁止は20時から朝6時までに変更」となりました
(ボルドー/塩津理代)