静謐で優美な「受胎告知」

もともとはドメニコ会の修道院として建てられたこの建物は、15世紀半ばにメディチ家の支援を受けて、建築家ミケロッツォによって改築されました。建物そのものが、当時の修道院建築の趣が色濃く残されており、その場に身を置くとまるで修道士たちが静かに祈りを捧げていた時代へと、そっと導かれるかのようです。

2階へと続く階段をゆっくりと上っていくと、目の前に現れるのがフラ・アンジェリコの代表作『受胎告知』。やわらかく差し込む光の中に浮かぶようなそのフレスコ画は、大天使ガブリエルがマリアに神の子を宿したことを告げる、神秘に満ちた場面を描いています。階段を一歩ずつ進むごとに、その絵に近づいていくという体験そのものが、心を穏やかに整えてくれるようです。

2階には、かつて修道士たちが静かに瞑想し、祈りを捧げていた43室の小さな独居房が残されています。それぞれの部屋には、フラ・アンジェリコとその弟子たちによるフレスコ画が描かれており、一つひとつが祈りの場にふさわしい静けさを湛えています。その空間に身を置くと、数百年前の修道士たちの息遣いが感じられるようで、自然と自分の内面と向き合う時間が生まれるようです。

1階では、羊皮紙（ペルガメーナ）に描かれた中世の装飾写本のコレクションを見ることができます。緻密な模様や彩色は、まさに当時の修道院文化を象徴する芸術の結晶。繊細な手仕事からは、信仰と美が結びついていた時代の精神がにじみ出ています。デザインや装飾芸術に興味のある方にも、きっと心に残る展示となるでしょう。