フィレンツェの美術館が再開
フィレンツェでは約三ヶ月閉館していた美術館が徐々に開館し始めました。
再オープン直後の外国人観光客がいないこの時期を狙って人気美術館をゆっくり見ようと地元の人たちのチラホラと見学に来ているそうです。
(ローマでもサン・ピエトロ寺院の再開日に1600人のローマ市民が予約をしたというニュースが話題になっていました。)
そこで私もその流れに乗って再開後のピッティ宮殿を見学してきました。
ピッティ宮殿は5月28日から開館し、以下の様な入館規制に改正されていました。
-開館時間は8:30~13:30
-マスク着用
-ガイド付きのグループ観光はイヤホンガイドを利用していれば10人まで入館可能。
-体温検査 (入り口のところに空港と同じ体温検査の機械が設置され、検査機の下を通ると体温が測れる様になっています。37、5度以上の人は入館不可)
想像していていましたが、館内は入館者数が少なく、とても静かで落ち着いていました。
メディチ家、ハプスブルク家、ナポレオン、イタリア国王ヴィクトリオ・エマニュエレ2世の王宮…という華やかな歴史を持つこの宮殿は内装も豪華で天井画から壁の装飾、調度品、絨毯までどこに目を向けても煌びやかで豪華な内装になっています。
フィリッポ ・リッピ、ラファエロ、ティッツアーノ、カラヴァッジョ、アルテミシア・ジェンティリスキなど、ルネッサンスからバロック期までの巨匠たちの作品が壁を覆う様に掛けられ、訪問者を圧倒する様な印象を与える様になっています。
静かな空間で見る巨匠たちの作品は、まるで登場人物たちの話し声まで聞こえてきそうで、思わず顔を近づけてしまいます。(夜の薄暗い部屋で見るバロックの作品などはリアルすぎて怖いんだろうなと思ってみたり。。。)
特別展「ジョバンナ・ガルゾーニ展」
実は今回ピッティ宮殿は期間限定の特別展「ジョバンナ・ガルゾーニ展」が目的で見に行ってきました。
ジョバンナ・ガルゾーニは1600年代、「画家」が「男性の仕事」だった時代に活躍した稀少な女流画家であり、彼女の作品は肖像画、静物画、著名な作品の模写、細密画、織物の装飾デザインなど広い分野において高く評価されていました。
同時代に同じく女流画家として活躍したアルテミシア・ジェンティリスキ(アルテミシアは波乱万丈な人生を送ったことから本や映画なども出ています)と非常に仲が良かった事がこの展示会の研究で明らかになり、彼女とともにロンドンやナポリなど有力なパトロンを変えながら国際派アーティストとして活躍した様です。
作品を見て目を惹かれたのは、肖像画の髪の毛の繊細な線や(彼女は優美なペン使いや美しい書体の研究などもしていました) 、静物画での細かい細密描写、そしてモチーフには新世界のアメリカやアジアから運ばれてくる数々の珍しい果物や動物、植物などを描きこまれていて、当時の有力者たちが関心を持って集めていたものが反映されています。
実はこの「珍しいもの」の中に日本の「朝顔」が描かれていることから、1600年初めに長崎から「朝顔」が輸出されていたことになります。(絵に描かれているのは水色の小ぶりの朝顔であるのが分かります。)
当時は女性で画家という仕事を選ぶということは、社会的偏見が大きい分、大変だったと思いますが、女性であるがゆえに女性の有力者たちからも愛され、フィレンツェではトスカーナ大公妃のヴィットリア・デッラ・ローヴェレの庇護を受けています。
こちらの作品は大公妃の愛犬と中国産の茶碗に入れたホットチョコレートとビスケットが描かれた作品でビスケットの上には本物かと間違う様なリアルなハエがくっついています。
こちらはラファエロの人気のある「小椅子の聖母」(ピッティ宮殿所蔵)の模写作品。大公妃から信頼されていた彼女は作品を家に持って帰りゆっくり仕事をすることが許されたそうです。。。(羨ましいというか恐れ多いというか。。。)
フィレンツェの美の宝庫、ゴージャスなピッティ宮殿をぜひ機会があれば訪れてみて下さい。