ニースを拠点にした場合、公共バス『Lignes d’Azur』の発着は、旧市街と新市街の間にある『アルベール1世庭園』から『プロムナード・デュ・パイロン』、『ガリバルディ広場』を囲むように設けられた停留所からとなります。チケットはバス停近くの券売機やバスのドライバーから買うことができます。どんなに遠くてもコート・ダジュール内であれば1回券(€1.50)の定額で、安い&分かり易いです。
乗車前には必ず路線番号と行き先の確認を忘れずに。稀に目的地手前で折り返すような不規則な運行のバスもあります。また、帰りのバスの時刻確認もお忘れなく。スマートフォンで調べられればいいのですが、田舎だとwifi環境が悪い場合もありますので、目的地で降車した際にバス停の時刻表を写真に撮っておくと良いかもしれません。
◎マントン(Menton)
ニースからのバス:100番(ニース〜モナコ〜マントン行き)/所要時間:1時間15分
イタリアとの国境にあるマントンは、毎年2月中旬から3月には春を祝う『レモン祭り』で大きな賑わいを見せます。このお祭りは毎年テーマがあり、レモンとオレンジの実をふんだんに使って大きな山車が作られます。この山車を一目見ようと世界中から観光客が押し寄せます。お祭りの時期にはレモンタルト(Tarte au Citoron)が店先で売られていますので、ぜひお試しください。お土産にはLA MAISON DU CITRONのレモンシロップやリキュールがおすすめです。
マントンを愛した芸術家といえば、詩人であり小説家、劇作家、評論家、画家、映画監督、脚本家などマルチな才能をもつジャン・コクトー。この街の市役所には、彼が内装を手がけた『婚礼の間』があり、その独特な世界観を伺い知ることができます。現在も結婚式で利用されているほか、平日であれば中の見学も可能です。またマントンのメインとなる海岸には、彼の作品のコレクターであったベルギー人実業家セヴラン・ワンダーマンによる収集品を多数展示する『ジャン・コクトー美術館』があります。モダンな外観が目を引きますが、不思議と街の景観に溶け込んでいるのもジャン・コクトーがなせる技でしょうか。
◎アンティーブ(Antibes)
ニースからのバス:200番(ニース〜アンティーブ〜カンヌ行き)/所要時間:1時間
海に突き出した城砦がシンボルのアンティーブ。17世紀にこの地域で勢力を誇っていたグリマルディ家のお城跡です。ヴァカンスのシーズンになると街は活気付き、旧市街にはマルシェや屋台が夜遅くまで営業をしています。暑い日には人気のジェラート屋さんGelateria Del Portoに列ができるほど。手作りでとても味が濃いのでおすすめです。港にはヨットや豪華クルーザーが碇泊し、かのビル・ゲイツのクルーザーもあるとかないとか。港で目に飛び込んでくるのは『ル・ノマド』。アルファベットで形作られた大きな人形オブジェは遠くからでも確認することができます。アンティーブ岬(Cap d’Antibes)には美しい小さな入江が点在し、地元っ子はお気に入りを見つけて海水浴を楽しみます。
アンティーブといえば『ピカソ美術館』。ピカソは1946年9月からおよそ2ヶ月間、グリマルディ城にアトリエを構え制作に取り組みました。アトリエを去る際に、製作した作品を市に貸与したことがきっかけで美術館が作られることとなりました。アンティーブを愛したもう一人の芸術家といえば、『恋人たち』シリーズをはじめ愛らしい作風で知られるレイモン・ペイネ。パリ生まれのペイネは1976年からアンティーブ市民となり晩年を過ごしました。美術館のあるナショナル広場には『恋人たち』の銅像が飾られています。
◎エズ(EZE)
ニースからのバス:82番(ニース〜エズ〜ヴォーバン行き)/所要時間:45分
海からではその姿を見ることができないエズ。山の上にある小さな集落であることから、通称『鷲の巣村』と呼ばれています。村の全貌が見えてくるのは、バスで向かう最後のカーブを曲がったあたりでしょうか。本当に隠れるように静かに息を潜めているようです。その昔サヴォイア家の管轄にあったエズは、ニースからの侵攻に備え村を要塞化したと言われています。小さな村の入り口から中に入ると迷路のように入り組んだ小道が幾重にも続きます。村の中はもちろん車両禁止。村の入り口にいるロバは、ホテルに荷物を運ぶお仕事をしています。小道には地元のアーティストお店やギャラリーが軒を連ねます。エズにきたら上へ上へと道が続きますが、その頂点に『エズ熱帯庭園』があります。ここからは素晴らしいコート・ダジュールの景色を一望できるため、入園必須です。村のすぐ近くには南フランス3大香水メーカーの『フラゴナール(Fragonard)』や『ガリマール(Galimard)』もあり、滞在を楽しみことができます。ニース〜エズ間のは運行本数が少ないため、時間に余裕をもって観光しましょう。
◎サン・ポール・ド・ヴァンス(St-Paul de Vence)
ニースからのバス:400番(ニース〜サン・ポール・ド・ヴァンス〜ヴァンス行き)/所要時間:1時間
芸術家の村とも言えるサン・ポール・ド・ヴァンス。20世紀に入りマティスやピカソをはじめ多くの画家が訪れました。マルク・シャガールはおよそ20年間定住し、村の一角から見下ろせる墓地にお墓があります。現在も村に入ると多くのギャラリーが個性あふれる作品を紹介し、村のいたるところにオブジェが置いてあるため、観光をしていても楽しいポイントです。さらにアート好きには必ず訪れていただきたいのが、『マーグ財団美術館』です。サン・ポールの美しい自然の中で、ジャコメッティの中庭、ミロの迷路、シャガールのモザイク、ブラックのステンドグラスとモザイクを敷き詰めた池など、数多くの現代アートを楽しむことができます。
この他にもニースを中心に芸術家にまつわる美しい街が数多くあります。海や山のコントラスと豊かな食文化もコート・ダジュールの魅力です。次のヴァカンスには、のんびり路線バスの旅はいかがでしょうか。
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