その昔、パルマの北部ポー川沿いの街の農家では、豚を飼っていました。秋が深まり、霧が出るようになる11月、ノルチーノと呼ばれる屠畜業者が、一軒一軒農家を回って屠畜をし、農家では家族でサラミ、ハムを作り、1年間食べていました。その中でも一番高価と言われる「クラテッロ」を売り、翌年用の豚を購入していたのだそうです。
この伝統を残そうと、ポー川沿いの4つの町(シッサ、ポレジネ・パルメンセ、ジベッロ、ロッカビアンカ)で「ノヴェンバーポーク(豚祭り)」が行われています。パルマから約40km、車で40分です。2019年で18回目となるこの豚祭りはポレジネ パルメンセにレストランを持つマッシモ・スピガローリさんが、ミュンヘンのビール祭りに行き、ミュンヘンで「オクトーバーフェスティバル」ができるなら、パルマでも豚で「ノヴェンヴァーフェスティバル」ができるはずと、考案されたのが始まりだそうです。
11月の第1週末には、シッサ、第2週末はポレジネ パルメンセ、第3週末はジベッロ、第4週末はロッカ ビアンカと4週間に渡って場所を変えて行われます。テーマは「豚」です。貧しかった昔の農家の人々は「豚は爪以外は捨てるところはない」と皮は豆と煮込んで、血液は鉄分補給にスープに入れて、飲んでいたそうです。現在でも皮は豆と一緒に煮て、「ファジョーリ エ コティケ」というお料理で、このフェスティバルの会場でいただくことができます。私は、第2週目ポレジネ・パルメンセに行ってみました。ポー川沿いの長い土手でフェスティバルは行われていました。
長い屋外のメルカートが出て、この地方独特の様々な豚の加工品を試食しながら購入することができます。秋ならではの焼き栗を頬張りながらぶらぶらと歩きます。レッジョ エミリアとモデナで生産されるバルサミコ酢やパルミジャーノ レッジャーノチーズといったこの近辺の食品だけでなく、ゴルゴンゾーラチーズ、バカラ(鱈の塩漬け)、オリーブなど、イタリアの各地から生産者が自慢の品を売っていました。ストリートフードのハンバーガー、フライドポテト、ビールも、地ビール、手作りハンバーガーで、屋台で売っています。この日は、巨大な「プレーテ」という豚の皮で包んだ加熱ハムを大鍋で煮詰めていました。午前中から屋外に特設した大鍋で煮詰め、15時に引き揚げです。「1ウーノ、2ドゥーエ、3トレ」と鉄の鎖で引き上げられたプレーテと呼ばれるハムは、430kgもあります。
引き上げられた「プレーテ」は細かく分けて、来場者に試食させてくれました。大きなハムがあっという間に分けられ、終わってしまいました。
第3週目のジベッロでは、ハムの王様「クラテッロ」のハギレで作られるストロルギーノというサラミで自ら作った2003年のギネス「世界1長いサラミ」の記録を更新すべく、ベテランと若者のサラミ職人が超長いストロルギーノを作ります。それを来場者にフライにして試食させてくれるそうですよ。
ノヴェンバーポークにいらしたら、「クラテッロ(お尻の部分の肉を膀胱の皮に詰めて熟成させた生ハム)」、「スパッラ クルダ(肩肉の生ハム)」、「スパッラ コッタ(肩肉の加熱ハム)」を試食するのをお忘れなく! またパルマの町では最近世界的にも知られてきた「クラテッロ」を食べることはできても、「スパッラ・クルダ」と「スパッラ・コッタ」はレストランでもいつもあるメニューではありません。この田舎町でしか作ることのない貴重なハムを是非豚祭りで試食してみてください。